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釧路川には、ダムが一つも無い。

屈斜路湖から太平洋まで 154 キロ。湖と湿原がダムの代わりをする川を、北海道開発局と国土交通省の資料で読みます。

01姿

154 キロを流れて、落ちる高さは 120 メートルほど。

釧路川は、屈斜路湖から流れ出します。弟子屈、標茶を通って釧路湿原に入り、釧路の街で太平洋に注ぎます。長さは 154 キロメートル。水を集める範囲は 2,510 平方キロメートルで、釧路市、釧路町、標茶町、弟子屈町、鶴居村にまたがります。

北海道開発局のページによると、上流と下流の高さの差は、120 メートルほどしかありません。流れの急な川が多い日本では、めずらしく、おだやかな川です。

国土交通省のページは、もう一つの特徴を挙げています。人が造ったダムや堰(せき)が一つも無い。日本では数少ない川だ、と。

代わりに、自然がダムの役目をしています。上流の屈斜路湖が水をため、中ほどから下の釧路湿原が、あふれた水を受け止めます。そのため、水の量が一年を通して安定しています。

土地の使われ方割合
山や森など約 68%
牧草地などの農地約 21%
釧路湿原約 8%
家や店などの市街地約 3%

釧路川が水を集める範囲の、土地の使われ方。北海道開発局 釧路開発建設部のページから。

02道

鉄道が通るまで、川が道だった。

釧路川は、むかしから、内陸と海を結ぶ道でした。明治に入ってからも、人、硫黄、木材、食べものが、この川を行き来しています。川を汽船が走っていました。

その役目は、1931 年(昭和 6 年)に終わります。釧路と網走を結ぶ鉄道(釧網線)が通ったからです。開発局のページは、いまは汽船に代わって、大勢の人がカヌーで川を下っている、と書いています。

その鉄道の上を 37 年走ってきた観光列車のことは、「くしろ湿原ノロッコ号の、37 年」に書きました。

釧路川のむかしの名前は「クスリ」です。意味には、いくつもの説があります。水源の屈斜路湖や上流に温泉が多いことから来たという説。西別、根室、斜里、美幌などへ抜ける道だったことから、「川から川へ通り抜けられる川」という意味だったという説。開発局のページは、どれとも決めずに並べています。

03洪水

1920 年の洪水で、新しい川が掘られた。

おだやかな川ですが、あふれたこともあります。記録に残るいちばん大きな洪水は、1920 年(大正 9 年)8 月です。釧路湿原の全体と、その下流の釧路の街が水につかり、2,000 戸を超える家が、流されたり、水につかったりしました。

これをきっかけに、翌年、川を直す計画が作られます。街の手前で、海までまっすぐ抜ける新しい水の道が掘られました。これが、いまの新釧路川です。

幣舞橋の下を流れているのは、もとからの釧路川のほうです。洪水の水は、新釧路川へ逃がす。そういう分担になっています。橋の歴史は、「幣舞橋は、五代目」に書きました。

1984 年には、国の計画の中に、釧路湿原が水をためる働きが、正式に組みこまれました。湿原は、鳥や魚のすみかであると同時に、釧路の街を洪水から守る場所でもあります。

04戻す

まっすぐにした川を、曲がった川に戻した。

釧路川とその支流は、土地を拓くために、あちこちでまっすぐに直されてきました。水はけが良くなり、畑や牧草地が広がりました。その一方で、川が運ぶ土砂が湿原の真ん中まで届くようになり、湿原が乾いて、生える草や木が変わってきました。

そこで、まっすぐにした川を、もとの曲がった川に戻す工事が行われました。場所は、標茶町の茅沼(かやぬま)。長さ約 2 キロメートルの区間です。

国土交通省のページによると、結果はこうでした。約 30 ヘクタールの湿地が戻った。魚の種類は約 2 倍、数は約 2.5 倍に増えた。日本でいちばん大きな淡水の魚、イトウも確かめられた。戻した区間は、新しいカヌーの道にもなっています。

開発局の提言には、こういう一行もあります。工事をするときは、まわりの農地への影響を考えること。湿原を戻すことと、牧草地を守ることを、両方見ながら進めてきた、ということです。

湿原の広さについて、一つ補います。開発局のページは、釧路湿原を 17,570 ヘクタールと書いています。「釧路湿原は、誰の土地か」に書いた 28,788 ヘクタールは、まわりの丘なども含めた国立公園の広さです。

ここまでで言えること
  • 釧路川は、屈斜路湖から太平洋まで 154 キロメートル。高さの差は 120 メートルほど。
  • 人が造ったダムや堰が無い。屈斜路湖と釧路湿原が、その役目をしている。
  • 1931 年に鉄道が通るまで、内陸と海を結ぶ道だった。
  • 1920 年の洪水をきっかけに、新釧路川が掘られた。
  • 茅沼では、まっすぐにした川を曲がった川に戻し、魚の種類が約 2 倍になった。

出どころ:国土交通省 北海道開発局「釧路川」、同 釧路開発建設部 釧路河川事務所のページ、同「釧路湿原の河川環境保全に関する提言」、国土交通省 水管理・国土保全局「日本の川 釧路川」。このページの最終更新:2026 年 10 月 14 日。