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北海道で最初の製紙工場は、釧路にあった。

水と、森と、石炭と、港。紙を作る条件がそろった町の 120 年あまりを、北海道開発局と釧路市の資料でたどります。

01最初の工場

北海道で最初の製紙工場は、釧路で動きはじめた。

釧路は、紙の町でもあります。北海道開発局の資料は、北海道ではじめての製紙工場は 1901 年、釧路で動きはじめた、と書いています。それを皮切りに、北海道の各地に、次々と工場ができました。

この工場を作ったのは、前田正名です。阿寒湖の森を残した、あの人です。前田一歩園財団の年表には、1900 年に釧路に製紙の会社を作った、とあります。正名のことは、「阿寒湖の森を、三代で守った家」に書きました。

なぜ北海道に、製紙工場がたくさん作られたのか。開発局の資料は、理由を四つ挙げています。水が豊かなこと。森が豊かなこと。石炭の出る土地に近いこと。広い土地が安く手に入ること。紙を作るには、大量の水と、木と、燃料が要ります。釧路には、その三つがそろっていました。

1942 年には、日本の紙の 32.2% が、北海道で作られていました。

02二つの工場

釧路には、大きな工場が二つあった。

年できごと
1900 年前田正名が、釧路に製紙の会社を作る(前田一歩園財団の年表)。
1901 年北海道ではじめての製紙工場が、釧路で動きはじめる(北海道開発局の資料)。
1920 年のちの日本製紙の釧路工場の歴史が、この年から始まる(釧路市は「101 年間」と書いている)。
1949 年大きな製紙会社が三つに分けられ、十條製紙、本州製紙などができる。
1959 年本州製紙の釧路工場が、大楽毛で動きはじめる(いまの王子マテリア釧路工場)。
1967 年釧路港が、海外からの木材チップを受け入れはじめる。北海道の港で最初。
2021 年8 月、日本製紙の釧路工場が紙を作るのを終える。10 月から「釧路事業所」になる。

釧路市のページは、炭鉱、水産、製紙の三つを、釧路の「三大基幹産業」と呼んでいます。製紙を担ってきたのは、二つの大きな工場でした。

一つは、街の西側にあった工場です。名前は何度か変わり、戦後は十條製紙、のちに日本製紙の釧路工場になりました。釧路市は、その歴史を「101 年間」と書いています。数えると、1920 年からです。市のページは、工場と、そこで暮らす人たちによって、地域の文化が育まれてきた、とも書いています。

もう一つは、大楽毛(おたのしけ)の工場です。1959 年に、本州製紙の釧路工場として動きはじめました。会社の合併や分割で名前が変わり、2012 年から、王子マテリアの釧路工場です。

03木と港

足りなくなった木は、港から入れた。

戦後、暮らしが豊かになると、紙がたくさん使われるようになりました。新聞や本だけでなく、ちり紙、段ボール、紙の箱へと、使い道も広がります。すると、国内の木だけでは足りなくなりました。

そこで 1960 年代から、海外の木を細かく砕いたもの(木材チップ)を、船で運んでくるようになります。開発局の資料によると、北海道でそれを最初に受け入れた港は、1967 年の釧路港でした。室蘭が 1968 年、苫小牧が 1970 年です。

紙の工場は、森の近くに作られ、やがて港の近くにある意味のほうが大きくなりました。釧路の工場は、その両方を持っていたことになります。

04いま

一つは紙を作るのを終え、一つは段ボールの紙を作り続けている。

2021 年 8 月、日本製紙の釧路工場は、紙を作るのを終えました。同じ年の 10 月から、「釧路事業所」という名前になっています。釧路市立博物館は、工場で働いた人たちから話を聞いて、記録に残す取り組みを続けています。

大楽毛の王子マテリア釧路工場は、いまも動いています。釧路市のページ(2022 年)によると、作っているのは、段ボールのもとになる紙です。年に 38 万トン。段ボールの紙の工場としては、国内でいちばん大きい、と市は書いています。動きはじめてから 67 年になります。

この工場は、ボイラーで燃やす石炭を、地元の炭鉱から買っています。釧路でいまも石炭が掘られていることは、「釧路では、いまも石炭を掘っている」に書きました。紙と石炭という、釧路の二つの産業が、ここでつながっています。

ここまでで言えること
  • 北海道で最初の製紙工場は、1901 年、釧路で動きはじめた。作ったのは前田正名。
  • 釧路市は、炭鉱・水産・製紙を「三大基幹産業」と呼んでいる。
  • 1967 年、釧路港は、北海道で最初に海外の木材チップを受け入れた。
  • 日本製紙の釧路工場は、2021 年 8 月に紙を作るのを終えた。
  • 王子マテリアの釧路工場は、段ボールの紙を年に 38 万トン作っている(2022 年の市のページ)。

出どころ:国土交通省 北海道開発局「北海道の製紙業と港湾との関わり」、釧路市のページ「十條製紙・日本製紙釧路工場の話を聞く会」(釧路市立博物館)「被表彰者のご紹介(王子マテリア株式会社 様)」(くしろ 100 年特別表彰、2022 年)、前田一歩園財団の年表。工場で働いていた人の数や、紙を作るのを終えた理由は、読めた資料に書かれていないので、ここでは書いていません。このページの最終更新:2026 年 10 月 14 日。