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33 羽から、1,800 羽へ。鶴居村とタンチョウ。

一度は絶えたと思われた鳥が、小学校のえさやりから戻ってきました。鶴居村と環境省の資料で、70 年あまりの歩みと、いまの数を読みます。

0133 羽

一度は、絶えたと思われていた。

タンチョウは、日本でひなを育てる、ただ一つのツルです。背の高さは 140 センチ、翼を広げると 240 センチ。日本でいちばん大きな鳥の一つです。

環境省の資料によると、タンチョウは明治の半ばまで、北海道じゅうの湿地でひなを育て、本州まで渡って冬を越すものもいたと考えられています。それが、狩りと湿地の開発で急に減り、一時は絶えたものと思われました。

1924 年(大正 13 年)、釧路湿原で十数羽がふたたび見つかります。けれども数はなかなか戻らず、1952 年の最初のいっせい調査で確かめられたのは、33 羽でした。

02えさやり

1952 年の冬、小学校で。

その 1952 年は、大雪と強い寒さの冬でした。環境省の資料は、この冬をきっかけに、タンチョウが人のまいたえさを急に食べるようになったと書いています。その 2 年前、阿寒町の畑にまかれたトウモロコシを食べる個体が現れたのが始まりでした。

鶴居村の年表には、同じ 1952 年に、村の小学校でえさやりが始まった、とあります。1962 年には、別の小学校でも始まりました。北海道がえさをやる人を正式に頼むようになったのも、この年です。

冬のえさやりは、それから 70 年あまり続いています。えさは、家畜のえさ用のトウモロコシ。決められた人が、手でまきます。

年できごと(鶴居村の年表から)
1924 年十数羽が、ふたたび見つかる。
1952 年鶴居村の小学校で、えさやりが始まる。特別天然記念物になる。最初のいっせい調査で 33 羽。
1964 年「北海道の鳥」になる。
1971 年電力会社が、電線にぶつからないための目印を付ける。
1987 年日本野鳥の会が、村内にタンチョウの保護の拠点を開く。
1992 年種をまく時期のトウモロコシ畑で、食べられる被害が続く。
2006 年いっせい調査で、はじめて 1,000 羽を超える(1,081 羽)。
2013 年環境省が、冬の居場所を分散させる計画を作る。
2015 年環境省が、えさの量を減らしはじめる。
2024 年ふたたび見つかってから 100 年。

03いまの数

北海道全体で 1,800 羽ほど。その多くが、冬は鶴居村に来る。

数は戻りました。2006 年にはじめて 1,000 羽を超え、環境省の資料では、いまは約 1,800 羽とされています。世界のタンチョウは約 3,430 羽なので、その半分ほどが北海道にいることになります。

北海道は毎年、12 月と 1 月の 2 回、決めた日にいっせいに数を数えています。鶴居村のページに、村の数と北海道全体の数が並んでいます。

年度1 回目(12 月)鶴居村1 回目 北海道全体2 回目(1 月)鶴居村2 回目 北海道全体2 回目の、鶴居村の割合
2018 年度2881,0166601,35948.6%
2019 年度3031,2156111,33345.8%
2020 年度3861,0596981,47847.2%
2021 年度3209016471,48943.5%
2022 年度2809335791,30544.4%
2023 年度2861,0496831,32951.4%
2024 年度1989385951,88931.5%

鶴居村のページ「タンチョウ越冬分布調査」から。その日に確かめられた数で、すべてのタンチョウの数ではありません。

どの年も、12 月より 1 月のほうが、鶴居村の数が多くなっています。寒さが深まるほど、えさ場に集まるからです。村は、日によっては 200 羽を超えるタンチョウがえさ場に来る、と書いています。

1 月の調査で、鶴居村が北海道全体に占める割合は、2018 年度から 2023 年度までは 43.5% から 51.4% のあいだでした。2024 年度は 31.5% です。村の数は 600 羽前後で大きく変わっていません。この年は、北海道全体で確かめられた数が 1,889 羽と多かったためです。

04次の心配

増えたあとの、新しい心配。

数が戻ったことで、別の心配が出てきました。

一つは、集まりすぎです。環境省の資料によると、冬になると 9 割を超えるタンチョウが、釧路地方のえさ場に集まります。そこで鳥インフルエンザのような重い病気が出ると、数が一気に減るおそれがあります。

このため環境省は 2013 年に、冬の居場所を広げる計画を作りました。えさやりは「当面の手だて」と位置づけ、2015 年から量を少しずつ減らしています。2019 年度には、いちばん多いときの量を 2014 年度の半分まで減らしました。十勝地方では、すでに約 200 羽が冬を越しています。

もう一つは、人の暮らしとの近さです。電線にぶつかる、車にはねられる、牛のふん尿をためる槽に落ちる。鶴居村の年表には、1992 年に、種をまく時期のトウモロコシ畑で食べられる被害が続いた、とあります。守る相手であり、畑を荒らす相手でもある。酪農の村にとって、タンチョウはその両方です。

05見に来る人

見られるのは、12 月のはじめから 2 月の終わりまで。

鶴居村は、見に来る人に向けて、はっきり書いています。えさやりは 12 月のはじめから 2 月の終わりまでの予定で、えさの量を減らしているぶん、えさ場で見られる期間も短くなっている。見に来るなら、その期間に合わせて計画してほしい、と。

いちばん多く来るのは 1 月と 2 月です。つがいが向かい合って舞う姿も、この時期がいちばん見やすいとのことです。

タンチョウが冬を越す湿原のことは、「釧路湿原は、誰の土地か」に書きました。

ここまでで言えること
  • 1952 年の最初の調査で確かめられたタンチョウは、33 羽だった。
  • 同じ年、鶴居村の小学校でえさやりが始まった。
  • 2006 年に 1,000 羽を超え、いまは約 1,800 羽。世界のタンチョウの半分ほど。
  • 2024 年度の 1 月の調査では、北海道全体で 1,889 羽、そのうち鶴居村で 595 羽。
  • 冬に一か所に集まりすぎることが、いまの心配。環境省は、えさの量を減らしている。

出どころ:鶴居村のページ「タンチョウ越冬分布調査」「タンチョウ保護の歴史」「タンチョウの給餌について」、環境省 北海道地方環境事務所「タンチョウの概要」(令和 5 年 4 月)「タンチョウ生息地分散行動計画(第 2.0 版)」(令和 5 年 10 月)。このページの最終更新:2026 年 10 月 14 日。